●ハードディスク(HDD)ドライブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
AT互換機用内蔵3.5inchHDDハードディスクドライブ (Hard disk drive) は、磁性体を塗布した円盤に磁気ヘッドを用いて情報を記録し、また読み出す記憶装置。円盤がガラスやアルミニウム等固い素材で作られている事から硬い円盤の意味でハードディスクと呼ばれる。英語表記からHDDとも略されるほか、固定ディスクや Fixed disk とも呼ばれる。かつてパーソナルコンピュータ用の補助記憶装置として主流の位置を占めていたフロッピーディスクドライブと比較した場合、遥かにそれを凌駕する記憶容量を持ち、アクセス速度も非常に高速である。

現在市販されているハードディスクドライブは金属製の筐体で密閉されている為、密閉型ハードディスクドライブとも呼ばれている。

●ハードディスク(HDD)の概要

主に、汎用コンピュータの補助記憶装置として利用される他、大容量のランダムアクセス記録を必要とする業務用専用装置に用いられる。2000年代に入り家庭電化製品のデジタル化が進み、音声映像等のデータをデジタルデータとして記録する用途が生じてきた事から一般の家電製品での利用も増えている。安価で大容量かつランダムアクセスが可能でアクセス速度も速いという特性を生かし、2003年以降、特にハードディスクビデオレコーダーや携帯音楽再生装置といった用途での利用が増加している他、カーナビゲーションにも搭載され、地図情報の保存等に利用されている。

2005年現在、上記家電製品やパーソナルコンピュータ等での使用に於いては、コンピュータ本体の筐体内に内蔵する方式が主流であるが、本体とは別の専用の筐体に収めUSBやIEEE1394等の汎用バスを用いて接続して利用する方式も広く用いられている。また、ネットワーク上で汎用コンピュータ装置に従属しない独立した記憶装置として利用出来るような製品も存在する。

ハードディスクドライブは半導体メモリに比べて読出・書込に時間が掛かる。OSから見てハードディスクドライブと同様のオペレーションでより高速なアクセスを実現する為の工夫もされてきた。RAMディスクは、コンピュータ上に搭載されたRAMの一部を、デバイスドライバ等によりディスクドライブであるかのように見せかける仕組みで、古くから利用されている(パソコンではCP/MやMS-DOSの頃)。また、汎用ハードディスクドライブ等のディスクドライブと同様に操作出来るメモリディスク装置(電子ディスク装置)が汎用機(メインフレーム)用として1980年代から使用されているが、半導体メモリの価格低下に伴い一般向け装置も登場し、普及して来ている。

また、不揮発性フラッシュメモリとHDDのメリット、デメリットを補う為にメモリーとHDDを一緒にしたハイブリッドHDDが登場した。これにより消費電力の節約とともに、読み書き速度の向上、衝撃にも強くなった。今後ノートPCに普及すると思われる。

なお、ハードディスクドライブはその構造上、耐久性に問題の多い記憶装置であり、経年変化や衝撃などの理由により障害(クラッシュ)が高頻度で発生する。場合によっては何の前触れも無く動作不能に陥るなど理不尽な壊れ方をする事があるため、重要なデータが入っている場合は定期的にバックアップを取るなどの対策が必要となる。

●ハードディスク(HDD)の構造

ハードディスクドライブ内部
磁気ヘッド部分。プラッタが鏡の様にヘッドの姿を写している点に注意
磁気ヘッドの拡大図

プラッタハードディスクドライブの基本構造はレコードプレーヤーに類似している。レコード盤に当たる物がディスク、針に当たる物がヘッド、及びヘッドを駆動するアーム等から成り立つ。アームは円盤上を1秒間に最高100回程度の速度で往復でき、これによって円盤のどの位置に記録されたデータへも瞬時にヘッドを移動して読み取り、書き込みが可能となっている。コンピュータ製品に関わる他のディスク装置は、ヘッドを円盤回転軸の中心へ垂直に走査するのに対し、ハードディスクドライブのみこの方式でない点は興味深い。(ディスクパックから密閉型/サーボ面サーボからデータ面サーボに移行する 1970年代後半から1980年代初頭に、リニアアクチュエータ+ステップモータからスイングアーム+ボイスコイルに変化した。)

ガラスやアルミニウム等の硬い円板(ディスク)に磁性体を蒸着等の方法により塗布し、データを記録しているのでハードディスクという。また、この円板部分をプラッタと呼ぶ。更に、プラッタの各面の事をサーフェスと呼ぶ。通常、ハードディスクドライブは複数枚(1枚の場合もある)のプラッタが取り付けられていて、プラッタの両面(片面の場合もある)に読み書きする。

ハードディスクドライブには、磁性体の上にライナーと呼ばれている潤滑剤が塗布されている。ディスク停止時には磁気ヘッドとプラッタは接触しているが(この際の磁気ヘッド位置をシッピングゾーンと呼ぶ)、このライナーの上をヘッドが滑り、回転数が上がるに連れ、プラッタ表面近傍のプラッタと共に回転する空気によってヘッドが極僅か(後述#記録密度参照)に浮き上がる。このライナーが劣化すると、ヘッドが磁性面に引っかかる形で衝突し、ヘッドクラッシュという現象を起こす。一般に、このライナーの寿命がハードディスクドライブそのものの寿命となる。この為、密閉式のハードディスクドライブは準消耗品的な扱いを受ける場合が多い。ただし、メーカー・製品によっては、シッピングゾーンをプラッタの外に設ける場合もある。

古い時代(1980年代)のハードディスクドライブは、停止命令を送ると(NECのPC-9800シリーズでは「STOP」キーを押す)、ヘッドをプラッタから引き上げ、退避位置に移動させる様になっていた。しかし、部品点数削減と停止命令を送らないOS(MS-DOS等)の普及等から、ヘッドはプラッタの上に放置される様になった。この改良以降、互いに鏡面加工された物体が接触した状態で放置されると、そこで接着されてしまう「はりつき」と呼ばれる現象が発生するようになった。これは、ハードディスクドライブが起動しなくなる深刻な障害で、回復させる為に様々な方法が考案された(バケツの水を回す様にハードディスクドライブ筐体を電源を入れながら回転させる、クッションに包んでハードディスクドライブを床に落として衝撃を与える、筐体を分解してディスクを手で強制的に回転させる等)。後にプラッターの一部に凹凸を付けた領域を設け、電源が切られた場合、強制的にそこへ移動させる様になり、「はりつき」の悲劇は解消された。現在のOSは、ハードディスクドライブに停止命令や電源オフ命令を送る様になり、特に耐衝撃性能が要求される携帯機器向けのハードディスクドライブでは、ヘッドを退避領域に戻す機構(ドロップ・センサー機能)が復活している。

内部は、埃の侵入を防ぐ為密閉されており、フロッピーディスク装置とは違い記録メディアとドライブ、コントローラ、インターフェイスが一体となっている。基本的に金属製の筐体は開けられないようになっており、開けてしまうと埃が内部に付着して壊れてしまう。

但し、完全に密閉されている訳ではなく1箇所だけ小さな空気取り入れ口が存在するが、これは使用時の温度変化に伴うドライブ内の空気圧が上昇するのに対応する目的である。磁気ヘッド自体が空気分子により磁性面より幾分浮き上がっているので、温度変化は磁気ヘッドと磁性面の間隔を左右する要素となる。空気取り入れ口はこの圧力を一定に保つ役割を持つ。

●ハードディスク(HDD)のモーター

ハードディスクドライブの機能を実現している電気部品の内、駆動系に関わるのはモーターである。ハードディスクドライブに関わる電動機は2つあり、1つは円盤部分を回転させるモーター(スピンドルモーター)、もう1つはヘッドをシークさせるアームを駆動するモーター(ボイスコイルモーター)である。円盤部分を回転させるモーターはダイレクトドライブ方式となっており、5,400・7,200・10,000・15,000rpmが主立った回転数である。

アームの駆動モーターは通常のモーターの形をしておらず、早い話がリニアモーターとなっており、2枚の強力な磁石(主にネオジム磁石を使った物)の間にコイルを置き、このコイルの動きがそのままアームの動きとなっている。このようなアームのシーク方式は1993年頃から一般化したが、それ以前のハードディスクドライブには、ステッピングモーターの回転をアームの動きへと変換するリンク構造が用いられていた。この方式はハードディスクドライブ全体の小型化やシークタイムの微小化に不向きであり、現在そのような方式が用いられることはない。

スピンドルモーターやアーム駆動モーターは、サーボ制御によってコントロールされている。スピンドルモーターにホール素子を取り付け、回転数を制御している。この方式は、現在も変わっていない。アーム駆動モーターの位置決めは、古くはステッピングモーターが初期位置を確定すれば絶対座標で制御できる事から、サーボ制御は行われていなかった。しかしボイスコイルモーターになった時、アームの正しい位置を知る必要が生じた。初期の頃は、プラッターの1面をサーボ制御情報取得専用に用い、この面から読み取られた座標情報をもとにアームの位置決めを行っていた。現在はアドレス情報を記録データと混在させる事により、アームの熱変形の影響を抑え、さらにプラッターのサーボ制御専用面を廃した。

ハードディスクドライブは起動時にサーボ情報を収集するキャリブレーションと、定期的にサーボ情報を補正するリキャリブレーションを行う。いずれもサーボ情報をメモリに保持し、ヘッドの動作速度を向上させる為の動作である。時にこのリキャブレーションが問題となる事があった。Windowsなどで使われたコンシューマー用ハードディスクはサーボ情報収集中、ドライブへのアクセスを待機させても支障は無かった。しかし、FreeBSDなど一部のOSではこの待たされている間にタイムアウトが発生してドライブが切り離され、場合によってはOSがクラッシュするという事態が生じた。この為両者はそれぞれ改良を行い、サーボ情報収集中にアクセスがあった場合にはリキャリブレーション動作を中断してアクセスを受け入れ、またOSはリキャリブレーション動作の可能性を含めたタイムアウト時間を設定した。近年のハードディスクドライブは一度にサーボ情報を読むのではなく、定期的に通常のディスクI/Oに1トラック/1秒程度の間隔で割り込ませ、サーボ情報の補正を行っている製品が多い。アクセスの少ない深夜などで、ハードディスクドライブが「コツコツコツコツ」という音を立てる事があるのはこの為で、ときおりこの動作をクラッキングを受けたと勘違いする慌て者が見られる。

●ハードディスク(HDD)の軸受け

ハードディスクドライブには2つの軸受けが必要である。1つは円盤下部においてモーター内部の軸を支える軸受け、もう1つはヘッドをシークするアームの台座となっている部分である。軸受けの種類としてはモーターの回転軸の軸受部にボールを使用した玉軸受(ボールベアリング)と流体動圧軸受 (Fluid Dynamic Bearing;FDB) がある。流体動圧軸受はモーターの軸と軸受の間が潤滑油で満たされている。非回転時は軸と軸受が接しているが、回転時に動圧が発生し軸と軸受が非接触状態となる。その為回転抵抗が非常に低く静音でモーターの寿命も延長できるため、最近は流体軸受の方が主流である。潤滑油が漏れるのではないか?といった懸念が一部にあるようだが、オイルシール部は撥油膜(潤滑油をはじく)で被われており、大きな衝撃を加えない限りは潤滑油は飛散しない。

流体軸受けは潤滑油の粘性により、擦動面に設けられた溝を流れる際に生じる圧力よって軸を軸受けから浮上させる。従って、温度が下がって潤滑油の粘性が高く、かつ擦動面が接触している始動時、大きな起動トルクが必要になる。この為、流体軸受けを採用したドライブの最大消費電力はボールベアリングを採用したドライブよりも高めに設定してある。モーターを構成する永久磁石は経年劣化により磁力が弱まり、場合によっては起動トルクを支えきれなくなってしまう事がある。こうなってしまうと、ハードディスクドライブは電源を維持している限りは動作するが、一度電源を落とすと二度と起動しなくなってしまう。この現象は流体軸受けを採用しているドライブに特に顕著だが、ボールベアリング式のドライブでも、ベアリングのレール面が劣化してやはり起動トルクが大きくなってしまった場合にも見られる。サーバーなど長期運用する装置のメンテナンスを行う場合には、このような事態に備えて事前にバックアップを取る事を推奨する。

●ハードディスク(HDD)の記録密度

プラッタ上の記録密度は、1平方インチ辺り最大で垂直記録で178.8Gbit(2006年6月現在)、面内記録で120Gbitの物が製品化されている(2006年2月現在)。このような超高密度になったハードディスクドライブでは、ディスク回転時のプラッタとヘッドの距離は10nm〜30nmであり、タバコの煙の粒子より狭い為、ハードディスクドライブ内部は半導体製造工場並みの無塵度が求められる。

ヘッドとプラッタは、記録密度を支配するハードディスクドライブの主役である。かつてヘッドは、磁気テープ用ヘッドと同様の構造をした、ごく小さな点にギャップを持つ磁気回路に巻き付けられたコイルであった。そして、コイルそのものをエッチングによって微小領域に構成した薄膜ヘッド、そして磁気抵抗効果を利用したMRヘッド、さらに、現在(2006年8月時点)徐々にフェードアウトしつつある巨大磁気抵抗効果を利用したGMRヘッドから、トンネル磁気抵抗効果を利用したTMRヘッドへと移行しつつある。さらなる技術開発により、クーロンブロッケード異方性磁気抵抗効果が日立製作所より発表された。これは1平方インチ当たりの記録密度を現在の5倍、1Tbitに引き上げる道を切り開く物とされる。

プラッタは様々な表面処理技術によって進化している(その多くは半導体プロセス技術の進歩の恩恵を受けている)。その応用例の一つとして、IBMが発明したPixie Dust技術(反強磁性結合メディア、AFCメディア)がある。これはディスク表面の磁性体の上にルテニウム原子を3個コーティングして、さらに磁性体でコーティングしてサンドイッチにした物である。この技術は2001年、1平方インチあたりの記録密度を100Gbitに高める可能性を示し、同技術の改良版によって2002年100Gbitに達する製品を実際に発売した。その他に、ディスク表面に微細な凸凹(テクスチャ)を施し磁性体の表面積を大きくし、記録密度を高める技術を富士通が2002年に発表した。東北大学の岩崎俊一博士(現東北工業大学学長)が1977年に発明したもので、理論上では水平磁化記録方式よりも安定し高密度化できるが、いくつかの技術的困難が阻んでいた垂直磁化記録方式の更なる高密度記録の可能性を、2005年に東芝が現実のものとし、今日の超高密度記録を実現している。

ヘッドとプラッタのテクノロジは二人三脚であり、各メーカーが新技術開発へ向けて研鑽している。ムーアの法則には及ばないが、それでも加速度的に記憶容量は大容量化し、アクセス速度はより高速になっている。

●ハードディスク(HDD)のインターフェイス

パラレルATA端子とケーブルHDDのインターフェースとしては、現在大きく分けてIDE(ATA)とSCSIの2種類が用いられている。

外付けドライブとして、古くから使われているSCSIの他に今ではUSBやIEEE1394で接続するのが一般的となってきているが、ハードディスクドライブ本体のインターフェースはIDEである。外付けドライブ内部に変換基板があり、IDEからそれぞれの外部インターフェースに変換されているに過ぎない。尚、外付けインターフェースの一種として、ネットワークからTCP/IP接続出来る様にしたNASも徐々に普及してきているが、これもハードディスクドライブ本体はSCSIハードディスクドライブかIDEハードディスクドライブが使われる。

現在、コンシューマー市場の主流は、内蔵用ハードディスクドライブとして、IDE(ATA)インターフェースを採用した製品である。これは、第一にコンピューター側のインターフェースがIDEの方が低コストで製造できたからである。そのため、IDEインターフェイスは、PC/AT互換機に標準的に搭載されるようになっていき、後には、PC/AT互換機で一般的に使われるチップセットにはIDEコントローラーが含まれるようになった。そして、これらの効果により生産量が増えたIDEハードディスクドライブが量産効果によって安価になっていった。これに対して、SCSIハードディスクは、ハードディスク単体の値段の差もさることながら、多くの場合SCSIインターフェースボードを購入する分高コストになったため、一般用としてはあまり利用されず、各種サーバー用途での利用が主である。

IDEは、IDEのコマンド体系を拡張したATAPIに対して機能追加した事で、機能面ではSCSIに近付いている。しかし、規格に盛り込まれただけで実際の製品には未実装の機能もあり、コマンドキューイングなどの機能はシリアルATAによって初めて実装された。これまで性能面で確実な発展を遂げてきたが特に容量面での急速な増大が著しく、俗に「容量の壁」と呼ばれる問題は規格やBIOSがハードディスクドライブ容量の急激な増大に追いつかないことで発生した。容量増加は信頼性の点にも影を落としている。ATAで定められているエラー訂正能力は現在の巨大な容量には見合わないものとなり、かつて無視できる程小さかったリスクのポテンシャルは増大する傾向にある。

2006年現在は、パラレルIDEからシリアルATAへの過渡期にあたり、パソコンショップの店頭に並ぶハードディスクドライブは、既にシリアルATAが多くなってきている。また、パラレルATAは規格上の制限から外付けには使えなかったが、シリアルATAを外付けドライブとして用いる為の拡張規格として、eSATAが規格化され製品化されている。

現在、サーバー用以外での使用者は自作PCユーザ層の僅かにとどまり、個人向けの市場では非常に少なくなったSCSIハードディスクドライブであるが、その時々の最新規格では常にATA系の規格を凌駕する高性能規格として存続している。特にパラレルIDEインターフェースでは通信エラーを検出する事が出来ない、SCSIでは改良の過程においてパリティビットを備え信頼性を高めた事から、高信頼性を必要とする企業向けサーバや、ストレージシステムに用いられるハードディスクドライブの主力インターフェースとして、SCSIは広く採用されている。性能面で高回転化(現行品は10,000rpmと15,000rpm)が進み、ランダムアクセス性能に秀でているが、高回転化ゆえにプラッタ径が小さくなり容量増大は緩やかだった。また一般にIDEハードディスクドライブに比べ信頼性・耐久性に優れるとされるが、IDEハードディスクドライブの進化によって差は小さくなっていると考えられる。 例えばカーナビ用、ハードディスクレコーダ等AV機器用などの一部の用途で使われるIDEハードディスクドライブは信頼性の高い製品が使われ、また現在のSCSIハードディスクドライブ並の10,000rpm品も一定の支持を集める、シリアルATAではCRCによる通信エラーの検出が行われるなど、性能・信頼性の面で現在のSCSIハードディスクドライブとのと格差は減少している。

一時期U1280まで計画されたパラレルSCSIは、U320を最後に打ち切られ、最新規格はATAとほぼ同時期にシリアル化されたSerial Attached SCSI(SAS)となっている。この規格では、SASのH/A(ホスト・バス・アダプタ:SCSIのコントロールカードは伝統的にこう呼ばれる)にSerial SCSIとSerial ATAの両方を接続可能としている。その為、シリアルATA規格にはSCSIコマンド体系の一部が取り込まれ、パラレルATA規格に比べ、よりインテリジェンスな規格に変貌している。また、光ファイバーケーブルを使ったファイバーチャネル(FC)もSCSIに属する規格であり、最近では様々なストレージエリアネットワーク(SAN)に利用されている。マルチメディア系のインターフェースとして一般に普及したIEEE1394も、SCSI規格がベースとなっていることから、広義のSCSI規格に属する。

●ハードディスク(HDD)コントローラ

ヘッドにケーブル、もしくはフィルム基板の形で直結されているピックアップアンプからインターフェースまでの間に、コントローラ基板を搭載している(汎用機の時代には別体であった時代もあった)。一般的にこの基板は、それ自体が独立したマイコンで、モーターやヘッドのサーボ制御・位置決め・トラック位置に応じた書き込み電圧の制御・読み書きする際の変調・インターフェースとのデータの入出力・キャッシュメモリの制御等を行う。1990年頃から更にタグ付キューイングと遅延書き込みを担当し、OSの負荷を軽減した。1990年半ばからIDEハードディスクドライブでは、DMA転送モードの取り扱いを始めた(しかしその活用はUltra DMAの登場まで待つ事となる)。

高機能なコントローラ(主にSCSIで)は、ハードディスクドライブ間の通信をサポートしている。例えば、ファイルを別のハードディスクドライブにコピーする時、コントローラがセクタを読み取って別のハードディスクドライブに転送して書き込むといった事ができる(ホストCPUのメモリにはアクセスしない。言い換えればその操作中CPUは別の仕事ができる)。また、他のハードディスクドライブのサーボ情報と連携を取り、複数のハードディスクドライブのスピンドルモーターの回転を同調する事ができる。これはRAIDにおいてアクセス速度を向上させるのに役立ったが、近年のデータ読み書き速度の向上と、大容量のキャッシュメモリを備える事、バスマスター転送による非同期I/Oの普及により、この機能は廃れている。

かつて、SASIインターフェースを備えたSASIハードディスクドライブが主流であった頃、コントローラは2種類のインターフェースを持っていた。一つはホストCPUとつながる為のSASIインターフェース、もう一つはスレーブコントローラ(ST-506仕様)を接続する為の拡張インターフェースである。しかしベアドライブを除くスレーブとなる製品が市場に殆ど出回らなかった事から、SASIハードディスクドライブはホストCPUに一台しか繋がらなかった。SASIハードディスクドライブは時代の変遷と共にその座をSCSIハードディスクドライブに譲った(時代的誤認が散見され、SASIの後継がIDEと認識されている場合があるが、SASIはSCSIの直接の先祖であり、電気的特性も近く、ソフトウエアで工夫することでSASIインターフェースをSCSIインターフェースとして動作させられる程、この2者の関係は深い)。

特殊なコントローラとして、ESDIインターフェースとSCSI,SASI,IDEインターフェースを仲介する外付けコントローラが存在した。このコントローラは旧時代のESDIハードディスクドライブ・インターフェースと、近代的なハードディスクドライブ・インターフェースの橋渡し役として機能した(初期のSASI,SCSI,IDEハードディスクドライブはこのコントローラを内蔵していた)。SCSI/SASI/IDE→ESDIに変換するタイプのコントローラの中身は、現代のハードディスクドライブのコントローラそのものに近い。ESDIはそのベースとなったST-506を改良したインターフェースIDEが作られ、その座をIDEハードディスクドライブに譲った。

●ハードディスク(HDD)のパーティション

ハードディスクドライブは1台で大容量を利用出来る為、利用方法に合わせて内部を区画(パーティション)に分割出来る。個々の区画を別々のOSで利用する事も出来る。

●ハードディスク(HDD)のサイズ

HDDのサイズ比較の一例
左から5.25,3.5,2.5,PCMCIA-HDD2005年現在のコンピュータで利用されているものは、殆どが3.5インチや2.5インチサイズのプラッタである。小さなものでは、CFメモリーカードサイズのマイクロドライブ、iVDR (Information Versatile Disk for Removable usage) 等もある。小さいサイズのHDDは、近年急速に大容量化するフラッシュメモリと競合しており、小さい順に市場が縮小しつつある。

8インチ - 大型汎用コンピュータ用途。1980年代まではパーソナルコンピュータ用途でもあった。
5インチ - 大型汎用コンピュータ、1990年代半ばまでのパーソナルコンピュータ用途。
3.5インチ - 1990年代以降、現在のデスクトップパソコンやサーバ、ワークステーション用の主流。なお、回転数が15000rpmに達するような、サーバ、ワークステーション向けハードディスクドライブでは、躯体は3.5インチ用のものでも、内蔵されているプラッタはそれよりも小さいものが多い。
2.5インチ - ノートパソコン用の主流、最近ではカーナビゲーションシステムや家庭用ゲーム機等でも利用されている。近年SCSI規格の2.5インチ型が復活。従来のノートパソコン向け低性能・低消費電力型ではなく、サーバ向けの高性能・省スペース型となっている。
1.8インチ - 大部分の小型軽量タイプのノートパソコン用、携帯型音楽プレーヤ、携帯型ビデオプレーヤ用途等。ハードディスクPCカードのモバイルディスクという単体商品もあった。1.89インチと扱われる場合もある。ノートパソコン用としては2.5インチと接続が同じで長さを短くした日立タイプとPCカード型(但しモバイルディスクとは異なりPCカードスロットにはささらない)の東芝タイプがある。
1.3インチ - HP製キティホークなどの例が有り、1.8インチと1インチの中間容量として再度期待されている。
1インチ - 単体ではマイクロドライブと言われる商標のものが一般的に知られている。高性能デジタルカメラや小型携帯型音楽プレーヤー、PDAにも。
0.85インチ - 超小型。東芝が2003年に開発。自社の開発するデジタルビデオカメラに使われている。2006年2月に発売されたKDDIのau向けの携帯電話、W41Tにも搭載されている。内部のプラッタは0.85インチ=21.6mmで、これは五円硬貨とほぼ同じサイズ。
現状ではほとんど意識する必要もないが、少し前までは厚さによる差異も存在した。

ハーフハイト - 41.3mm。2000年以前の高性能3.5インチSCSIHDDに用いられた厚さで、プラッタ5枚以上・磁気ヘッド10個以上の構成となっていた。その後の記憶密度の向上により、これほどのプラッタを内蔵する必要は無くなり、現在では少数の中古品が流通しているに過ぎない。
1インチハイト - 25.4mm。現在では標準的な3.5インチ型HDDの厚さ。プラッタは1〜3枚。大容量製品には4〜5枚もある。
19mm - 3/4インチ。2.5インチ型HDDの初期に存在した厚さ。EIDEよりも前の時代の頃まで。
12.5mm - 1/2インチ。2.5インチ型HDDの初期に存在した厚さ。各社微妙に厚さが異なっているため、中古で購入する場合は注意すること。プラッタは1〜3枚。最近のFujitsuの大容量タイプの2.5インチ型で復活したが、流通量は比較的少数。
9.5mm - 3/8インチ。現在では標準的な2.5インチ型HDDの厚さ。プラッタは1〜2枚。
8.45mm - 2/3インチ。ごく一時期の東芝製2.5インチ型HDDのみ。プラッタは1枚。
6.35mm - 1/4インチ。ごく一時期の東芝製2.5インチ型HDDのみ。プラッタは1枚。

●外付けハードディスク(HDD)

外付けHDD
(バッファロー製)ハードディスクドライブはコンピュータの筐体に内蔵されるのみでなく、外部補助記憶装置としても利用されている。外付けハードディスクドライブはハードディスクドライブ本体を更に金属や樹脂の筐体に入れ、変換回路により端子を変換し、ケーブルによってコンピュータに接続出来る様にした物である。中には内蔵ハードディスクドライブをハードディスクケースという専用のケースに取り付けて外付けハードディスクドライブとして利用出来る様にした装置もある。これは低価格だが取り付けの手間がかかる内蔵ハードディスクドライブの利点と、手軽に使用出来るが高価な外付けハードディスクドライブの両方の利点を生かし、ハードディスクドライブを低価格で入手出来、且つ手軽に扱えるようになるものである。

接続にはSCSI、USB、IEEE1394、ファイバーチャネル、eSATA、Ethernet等が用いられるが、ATA/ATAPI規格はケーブル長が46cm以内と制限されるため一般的には用いられない。これはATA/ATAPI規格はコンピュータ内部での補助記憶装置の接続に特化して開発されており、コンピュータ筐体外部まで配線を曳き回すことへのノイズ対策が講じられていないことに由るものである。

MacintoshはFireWireまたはSCSIで、他のMacintoshと接続することで、外付けハードディスクドライブとして利用できるようになる(接続先から起動も可能)。その他にも、ハードディスクドライブを搭載したデジタルオーディオプレーヤー(iPodなど)やモバイルコンピュータ等がコンピュータと直接接続する事によって外付けハードディスクドライブと同様の役割を持つ事が出来る様になっている製品も存在する。

ハードディスクドライブの論理的な記録構造を応用したものにRAIDという仕組みが存在する。これはハードディスクドライブの記憶領域を直列、または並列、もしくはその両方、といった形式に論理的な接続(ハードディスクドライブのインターフェイスとの接続は物理的である点に注意)を行い、体感上の速度を上げたり、同じデータが2つのハードディスクドライブに記録されるようにし、バックアップを常時取れるように改良する仕組みと言える。通常、こういった仕掛けは外付けタイプのハードディスクドライブで行われ、そのような装置を一般にRAIDアレイと呼ぶ。RAIDアレイは一般的なハードディスクドライブとは呼べず、大きさも然る事ながら価格も高価である事から、企業等のような団体や組織で使用される事例が殆どである。

●リムーバブルハードディスク

ディスクを取り外し可能なハードディスク。

リムーバブルメディアにはフロッピー系(フロッピーディスク、Bernoulliディスク、Zip等)、テープ系(DDS、LTO等)、光磁気ディスク系(MO、MD等)、ハードディスク系等、様々な技術を用いた数多くの製品が今迄に発売されて来たが、その内のハードディスク系のものの総称として、一般的にリムーバブルハードディスクと呼ぶ。ハードディスクドライブのディスク部のみをカートリッジに入れ、ヘッドや駆動部からなるドライブ本体から構成されており、フロッピーディスクやMOのように使う事が出来る。

他のリムーバブルメディアと比較してハードディスク系は、大容量(フロッピー系、光磁気ディスクよりも)、読み書き速度が高速(フロッピー系、テープドライブ系、光磁気ディスクよりも)、低価格(米国に於いては光磁気ディスクよりも)という点で優れており、更にハードディスクドライブの技術がそのまま転用出来る為、新技術の導入も早かった。

1990年代前半までは、米国では広く使われていたリムーバブルメディア(日本ではMOが普及していた為、あまり使われなかったようである)であったが、構造上、埃や衝撃に弱いという欠点があり、また、以前は大容量の物を作るのが難しかったフロッピー系メディアでも、Zipやスーパーディスクの様な大容量で低価格な製品が登場した事により、メディアの価格面で対抗出来ず、現在では存在が薄れている。

5インチ、3.5インチのディスクで、様々な容量の製品が発売されていて、代表的なものにSyQuestのSQ327, EZ135, EzFlyer, SparQ、SyJetや、アイオメガのJaz、Peerless、CASTLEWOOD社のORB等があった。一時はSyQuestやNomai社を中心に、PDC(Power Disk Cartridge)というメディアの統一規格策定の動きもあったが、普及する前にリムーバブルハードディスク自体の人気が下火になり、消失した。現在ではアイオメガから2.5インチ、MDほどの大きさのREVが、アイオーデータからiVDRが発売されている。

●リムーバブルハードディスクドライブケース

一方で、内蔵ハードディスクドライブを専用のトレイに固定し、そのトレイをリムーバブルハードディスクドライブケース(リムーバブルケースと略される場合が多い。名称が長い為本項でも略語を用いる)と呼ばれる筐体に格納する事で疑似的なリムーバブルハードディスクにしてしまう製品が存在している。これは前述のハードディスクドライブケースと内蔵ハードディスクドライブを用いた疑似外付けハードディスクドライブの利点に加え、取り外しが可能である点を活かして可搬性の向上と、ハードディスクドライブの入れ替えを容易にし、尚且つ省スペース、ケーブル類が少しで済む(単なる外付けではインターフェースケーブルや電源コードだらけになる)という特徴をもつ。

前述のカートリッジタイプでは、ドライブの生産中止等によりメディアが使えなくなる場合があった。また、メディア容量を増やしたい時は、ドライブとメディア全て他のものに買い換えねばならない場合が多かった(互換性のある上位機種が少ない為)。それに対してリムーバブルケースでは、ケースが手に入らなくなっても、他社の製品に中身のディスクドライブを入れ替えれば続けて使える。また逆に手持ちのケースの中身のディスクドライブを変えるだけで、容量の増加が簡単に行えるという長所がある。

1998年〜2000年以前では、リムーバブルハードディスクというと、前述のハードディスクドライブの構造を持ったリムーバブルメディアのもののみを指していた。しかし、それらの製品群は、1998年〜2000年ごろには他メディアに押されて販売中止となる製品が続出し、陰の薄いものとなった。それに対し、このころに登場した後述のリムーバブルケースは登場と同時に爆発的に普及し、一般に広く知られるようになった。そのため、現在では後者のものを指すことが多くなった。


●ハードディスクドライブそのものをカートリッジにした物

SCSIではSCAコネクタを採用した物で、ハードディスクドライブそのものをスロットに押し込んで使うシャーシがある(これは薄型RAIDでよく使われた)。汎用リムーバブルケースに比べて、カートリッジ化する為の部品装着の手間が不要になる、ハードディスクドライブがシャーシに接触するので放熱効率が良い、実装密度を高くする事が出来るなどのメリットがある。デメリットとしてSCAコネクタを搭載したハードディスクドライブ自体が製造数の関係で安価ではない、大容量ドライブの入手性に難があるなどがあげられる。

2.5インチハードディスクドライブはパラレルATAでも、40ピンATAのピンピッチを狭くしただけでなく、電源の4ピン分を含めた44ピンATAに、マスター/スレーブ設定ピンなどを含む50ピンATAとしてコネクタ位置が統一されている。コネクタの抜き差しも弱い力で済んだ事から、ノートパソコンでは同じくハードディスクドライブそのものをスロットに押し込んで使う筐体も有った。安いベアドライブを簡単に入替えられ評判が良かったが、ノートパソコンの筐体の場合、ドライブを抜き差しする開口部を作る事すら厳しい事、ドライブの高さが8mm/9mm/12mmと異なる高さの製品があった事から、実例は多くは無い(日立フローラ、東芝ダイナブック・ポルテジ・リブレット、IBMシンクパッドなどの一部のモデルが本体を分解しなくてもアクセス出来るスロットを備えた)。

3.5インチIDEハードディスクドライブがシリアルATA化した際に、コネクタの位置が厳密に規定された事、コネクタ自体がこじらなくても抜き差しできる様になった事から、従来SCAコネクタハードディスクドライブが採用されていた市場・分野にシリアルATAハードディスクドライブが進出している。SCAコネクタハードディスクドライブの欠点であった、容量の問題、価格の問題も解決しており、コンシューマー向けの5"ベイに搭載するリムーバブルシャーシから、大規模ストレージまで幅広く使われる様になった。シリアルATAコネクタを搭載した高信頼性型ハードディスクドライブも登場している。

●リムーバブルケースとカートリッジタイプの比較

前述の通りハードディスクドライブをリムーバブルにする技術は現在2種類ある。どちらを使用すべきか悩んでいるのであれば以下の比較表を参考にすると良い。

リムーバブルケース カートリッジタイプ
接続に関する手間 ねじ止め、多数のケーブルの接続が必要 SCSI等のケーブルのみ(内蔵タイプは除く)
扱い易さ ディスク着脱の度に再起動が必要で煩雑(IDE接続以外は再起動が不要) メディアの交換がフロッピーディスクと同様に行え、簡単
耐衝撃性 ハードディスクドライブと同様(弱い) 他のメディアよりは弱いが、持ち運びが前提の規格なので、考慮はされている
ディスクサイズ ハードディスクドライブと同じか大きめ(トレイを着けたままでは大きくなる) MOのディスクより少し大きめ〜MDより少し大きめ
ディスク重量 読み取り装置、電源ユニット等も内蔵される為重い ディスクのみで構成される為軽い(規格によっては他の部品も含まれる)。但し他のメディアよりは重い。
記憶容量 内蔵するハードディスクドライブに由る (2GB〜1TB(1,000GB)) 使用する製品に由る。REVの場合35GB/70GB、iVDRの場合は30/40/80GB。
アクセス速度 ディスクに由る(5,400rpm〜7,200rpm前後) 製品に由る。REV/iVDRの場合4,200rpm
耐故障性 ディスクに由る。また冷却ファン電源とHDD電源を共用している場合が殆どで、冷却ファンの故障によるノイズがHDDの動作不安定強いては故障を招く事がある 機械的要素が本体装置にあり本体装置依存する

以上の比較から、リムーバブルケースは大容量のデータをディスク毎に分類する目的に適し、持ち運びにはリムーバブルハードディスクドライブが最適と言える。また、高いパフォーマンスが必要であればリムーバブルケースが望ましい。用途に合わせて選択すると良いだろう。

●ハードディスク(HDD)の品質

ハードディスクドライブは、その製造過程に於いて高度なクリーンルームや良質の磁性体、潤滑剤、制御基板等の品質に左右されている。これらの事柄が要因となってドライブのロット不良を起こす場合がある。これに対し、大手パソコンメーカー等では1つのパソコンモデルに対し、2〜3社の同一容量のドライブを採用し、危機分散を行っている。

●ハードディスク(HDD)の製品寿命

ハードディスクドライブの寿命はS.M.A.R.T.で計られ、MTBF(平均故障間隔)やMTTF(平均故障時間)として推測される。一般に温度が高いほど寿命は短くなる。使用環境や製造ロット等に大きく左右されるが、同一ロットの製品でも個体差が大きい為寿命は一概には言えない。

また、個人向けのIDEと企業のサーバ用途向けのSCSIでは設計時における耐久性に格差が存在し、IDEは一日8時間使用で3年・SCSIは24時間稼動で5年を目安にしているとされるが、実際の製品寿命を保証する物ではない。また一般に高耐久・高信頼とされるSCSIであっても、本来RAID構成による24時間稼動を想定しているため、個人用途での使用に際しては想定より頻繁にON/OFFが繰り返されるため、高回転であることが災いして設計寿命を大きく縮めるとの説がある。この点に関してはIDEを含めHDDの寿命的に、省電力設定を使って使わない時には電源を切った方がいいのか、できるだけ電源を入れたままの方がいいのかは、人によって異なる見解を持つに至っている。

ある大手ハードディスクドライブ開発企業では、毎日8時間稼働させたハードディスクドライブは5年程度、連続稼働の場合は2年から3年程度が寿命と想定している様だ。6年以上経つ大手メーカー製PCでもHDD(リムーバブル)が一切故障を起こさないケースもある。逆を言えば、半年もせずに壊れるケースもある。

ハードディスクドライブは製品寿命が用途の重要性に照らして極めて短く、その稼動頻度から考えて「壊れ易い物」「消耗品」と断言出来る。凡そ磁気記憶装置が発明された時代から常に、バックアップはデータ保全上重要な課題である。ある統計では約80%の利用者がハードディスクドライブのデータ喪失を経験している。また近年、ハードユーザーの間で話題となったRAIDも一般的とは言えないが、この問題に対する対策の1つである。一般ユーザーレベルでも重要なデータをCD-RやDVD-R等の外部メディアへの保存をこまめに行う重要性が古くから唱えられている(この方法でもメディアの耐久性や保存環境等に注意する必要がある)。

ドライブの製造期間は短い物で3ヶ月、長い物で1年程度である。かつて通商産業省指導により性能部品等の保存期間を家電メーカーらが自主的に定め遂行した例(家電メーカー自主による製造終了後7年間の保守パーツ在庫保持など)はあるが、コンピュータを含む通信機器メーカーはその対象ではなかった。この為、パソコンメーカー等では修理部品の確保が難しい場合が多く、修理作業自体にかかる手間(故障したドライブの修復を行う専門業者も存在するが、かなり割高(軽症なら数千円〜重症だと十数万を軽く超える事も)な代金となる事が多い)やドライブの価格低下が激しい事情も合わせて、故障した製品の代替の部品と交換する事で対応する例も珍しくない。

●ハードディスク(HDD)に対する衝撃

ハードディスクドライブは落下等の強い衝撃を受けた場合、ヘッドが円盤面に衝突して円盤に傷が付いたり、モーター内のベアリングが変形したりしてデータの読み書きが不能となる場合がある(これを一般的にヘッドクラッシュと呼称する)。特に動作中の落下が故障し易い為、携帯用途で使用されるハードディスクドライブを内蔵した製品を扱う場合は強い衝撃を与えないように注意を払う必要がある。また、希に落下したあとでも正常に動作する場合、そこでできた傷がごみとなり、それがハードディスクドライブ全体に行き渡って破損するケースもある。

輸送時などの衝撃による破損を防ぐため、ヘッドをディスクの安全な領域へリトラクト(収納退避)させることが重要になる。例えばPC-9800シリーズなどの場合、電源を切る前にSTOPキーを押して手動リトラクトする習慣を身につけることが、ユーザーにとって一種の通過儀礼となっていた。やがて、電源を切った際にハードディスクドライブが能動的にリトラクトするオートリトラクト機能を備えることが一般的となった。

一部のハードディスクドライブではこれを発展させ、加速度センサーを内蔵し、自由落下を検出すると電源を切らずともオートリトラクトして破損を予防する機能が付加された。PowerBookなどではディスク外部に加速度センサーをもうけ,同様の機能を実現している。これらの発展によりハードディスクドライブの用途は大きく広がり、2006年には携帯電話への搭載も実現した。フラッシュメモリが主力となっている組み込み機器においても、何度でも書き込める・大容量である・容量辺りの単価が安い・汎用OSが使えるという利点から進出が期待されている。一方フラッシュメモリに比較すると、消費電力が多い、小容量ではコスト高になる、厚みがかさばるという難点もある。

●ハードディスク(HDD)制御基板

ハードディスク本体内部もさる事ながら、その制御基板の部品が焼損する事などで故障する例も多い。同一製品でも製造ロットごとに基板の部品構成が異なる例が多く、その場合はその基板を移植しても動作しない事が多い事や、メーカー側も基板交換の対応は行っていない事から、個人レベルでの対応は困難とされる。

●ハードディスク(HDD)データ漏曳

ハードディスクドライブはその殆どの物が本体内部(特にノートパソコンの場合は奥の方にある場合もある)に内蔵されているため、そのまま処分すると中身のデータを盗みとられてしまう危険性がある。特にデータ容量の大きいハードディスクドライブでは消し忘れ等があったり、また通常のファイル削除やフォーマットでは完全には消去されずファイル復帰ユーティリティーで復元される可能性がある。全データ領域を別なファイルで上書きしても、読み出せたデータとヘッドが読み取った信号の差分から上書きする前のデータを獲得する技術があり、実際にアメリカ連邦捜査局がプラッタに残存する磁性状態から電子メールなどの情報を復元、裁判で証拠として提出して認められるといった事例がある。売却・廃棄をする際は市販またはフリーウェアの消去ソフトで完全に消去すると良い。データが残ったまま故障した場合はハードディスクドライブそのものを物理的に破壊するしかない(コンピュータ本体ごと破壊してもハードディスクドライブが破壊されていなくては無意味である)。漏えいが重大な問題になる場合も、消去ソフトで消去するより物理的に破壊する方が望ましい。 物理的に破壊する方法としては、ハードディスクドライブ本体の隙間にドライバーなどを差し込んで本体をこじ開けて、中のプラッタを取り出す。プラッタがガラスでできていれば金槌で簡単に破壊できる(小さな破片が飛散するので、必ず袋に入れて行うこと)。プラッタが金属でできていれば踏みつけて折ったり、金属バサミで切ってしまうなど、確実に傷がついた状態で、円盤をばらばらにすればよい。外付けの場合は外装のボディを壊すと中に内蔵用のハードディスクと同じようなドライブが出てくる。

盗難等によるデータ漏洩を防ぐには、データに暗号化をかけてたとえハードディスクドライブが他人の手に渡っても復元できないようにしておくことが重要である。

インターネットなどのネットワークからの不正アクセスを保護するには、ファイアウォールを使用、ルータの設定などで不正アクセスを防ぐことが広く知られているが、ソフトウエアで遮断するより一番確実で安全なのは、重要なデータが入っているコンピュータをインターネットなどのネットワークに接続しないことである。

●ハードディスク(HDD)の製造主な企業

現在製造を行っている主な企業
シーゲイト (Seagate) - 最大手のHDD専業メーカーで、3.5インチ型を主力とする。2005年暮れに当時の有力メーカーMaxtor(3.5インチ型のサーバ向け・デスクトップ向け共に3位)を19億ドルで買収、両社合わせると2005年はデスクトップ向け3.5インチ型で40%超、サーバ向け3.5インチ型では66%を占めた。2003年からはモバイル向け2.5インチにも再参入し、総合HDDメーカに返り咲いている。
日立グローバルストレージテクノロジーズ (Hitachi Global Storage Technologies) - 略称HGST。2003年1月に日立製作所とIBMのHDD事業部門が統合して誕生した総合HDDメーカー。日立も古くからSCSIを中心にHDDを製造していたが全体からすると微々たる量で、経営主体は日立であるが実質的に旧IBMと言える。2005年のモバイル向け2.5インチ型ではトップシェア(32%)を誇る。
ウェスタン・デジタル (Western Digital) - デスクトップ向け3.5インチ型のみのメーカー。サーバ向け(SCSI)やモバイル向け2.5インチのラインナップが無いこともあり、一般には量産メーカーとのイメージが強く、技術面でのリーダーシップではSeagateや旧Maxtor、旧IBM(現HGST)などの他の競合メーカーに比べ劣るとされている。2005年はデスクトップ向け3.5インチ型で旧Maxtorを抜いてシェア2位(約20%)に浮上した。
富士通 - サーバ向け3.5インチ型とモバイル向け2.5インチ型のメーカー。2001年まではデスクトップ向け3.5インチ型も製造しており、当時日本で唯一の総合HDDメーカーだった。しかし激しい価格競争で採算性が悪化したデスクトップ向け3.5インチ型(IDE)から撤退、比較的採算性の良いサーバ向け(SCSI)やモバイル向け2.5インチに特化した(この為、富士通がHDD事業から撤退したとの誤解が今でも散見される)。2005年にはサーバ向け3.5インチ、モバイル向け2.5インチで、それぞれ20%台のシェアを獲得して2位となる。
東芝 - モバイル向け専業メーカー、小型化技術に定評がある。モバイル向け2.5インチではHGST・富士通と共に三強の一角を占めるも、2005年は僅差で3位に甘んじた。
サムスン電子 (Samsung Electronics) - 2001年頃から参入したメーカー。デスクトップ向け3.5インチ型の低価格帯でWDと競合している。メーカー製PCの内蔵用として採用されることは少なく、日本ではアイ・オー・データ機器やバッファローなどの外付けHDD製品に比較的多く使われる。

●過去に製造を行っていた主な企業

コナー (Conner Peripherals) - HDDドライブ等に用いられるIDEインタフェースをコンパック(Compaq)と共に開発したことでも知られる。1996年にシーゲイトに買収された。なお、Conner Technologyは、その後に設立された別企業。
クアンタム (Quantum) - HDD部門が2001年にマックストアと合併され、HDD事業から撤退。ストレージ関連企業としては存続している。
マックストア (Maxtor) - 上記シーゲイトの項にあるとおり、2005年にシーゲイトに買収された。
@misc{ wiki:xxx, author = "Wikipedia", title = "HDD --- Wikipedia{,} ", year = "2004", url = "\url{http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=HDD&oldid=2174664}", note = "[Online; accessed 15-2月-2007]" }